悪意が無いのは分かるけどさ
なーんかめんどくさいなぁ・・・
彼女と彼と青空と
32*新問題
「おややややや?」
窓から差し込む光を呆然と眺めて首をかしげた。
おかしい、明らかにおかしい。
昨日天気予報では雨だっていってたのに今日は晴れてるぞ
とかそんなおかしいじゃない。
太陽の位置が高すぎるのだ。
フ・・・なんだなんだ。
ここはまだアタシの夢の中か?
もぉ、さんマイッチングだな、なんて馬鹿なことを考えても
太陽の位置は変わらず、今日も元気に輝いていらっしゃる。
雲ひとつない青空が憎らしいぜちくしょー。
本当は見たくなかったけど、見ないと始まらない。
アタシは恐る恐る時計を見た。
現在時刻・・・11:23。
つ・ま・り!!!!
「ち、遅刻だあああああああああ!!!!」
慌てて着替えると髪をとかすことも無く家を飛び出した
走れアタシ、風のごとく
廊下は静まり返っていて今が授業中だということが分かる。
もう嫌だもう嫌だもう嫌だ!!!!
半泣きになりながらも階段を、廊下を、全力疾走。
阿部のせいだ!!
昨日、あの後結局自分の気持ちについてよく考えてみた。
考えすぎて寝れなかったんだ・・・!
しかも答えはまだ見つかってないっていうオチ。
最悪だ・・・何やってるんだアタシ!!!
というか、もし阿部が告白なんてしてこなかったら、アタシは寝坊も
遅刻もすることなく普通に学校に来てたのに!!!
そんな事考えたって仕方ない。
どうせ最終的には自分が悪いんだから。
「お、おはようございます、すみません!!!!
遅刻しましたああああああああああっとぉ!?」
息を切らして教室のドアを開けると、何かがこっちに向かって飛んできた。
それをギリギリのところでかわすと物体は廊下の壁にぶつかって粉々に砕けた。
って・・・これ!!よくみると・・・
「チョーク・・・だったり?」
「おはようさん」
「っ!!!!」
ダメだ・・・。
今振り返っちゃいけない気がする!!!!!
振り返っちゃいけない気がするんだけど・・・・!!!
アタシは何かの魔力で操られたように振り返った。
するとそこには、もはやお決まりになった担任の笑顔。
このパターンも何回目だ。
アタシも本当に学習しない人間だなと思う。
多分顔は引きつってるだろうけど、極力笑顔で目の前に立つ担任に
「おはようございます」という。
すると担任はそのことに満足がいったのか、にっこり笑うと
「いだだだだだだだ!!!!!」
両頬を思いっきりひっぱってきた。
ちょ!!これ半端なく痛い!!!!
つ、爪!!!先生爪食い込んでる!!!!食い込んでます!!!!
「お前のおはようはずいぶん遅い時間なようだな、。
今何時か言ってみろ」
「ハイッ!!ワタクシの体内時計では朝の7時半でございます!!」
「落とすぞ」
「いやいやいやいやいやー!!!!!
窓の方に引っ張っていかないで!!本気死んじゃう!!!
というかそろそろ頬っぺたが限界な感じです先生!!
ごめんなさい、こんな時間に登校してごめんなさい!!」
謝るとやっと教室に入れてもらえた。
すると、皆の視線がいつもと違う事に気づく。
いや、あんまり変わらないんだけど・・・なんだろう、何か違和感。
悪い感じじゃなくてこれは・・・興味?
視線が嫌で、いつもより早足で席に着いた。
フゥと一息ついてハッとする。
そういえば、隣の席って阿部だったんだ・・・。
ど、どうしよう、一応挨拶しといた方がいいのかな?
変じゃないよね、うん、普通だよね、普通。
よし・・・
「阿部、おはよー」
振り返った阿部の眉間にはシワが寄せられていました。
えー・・・アタシなんかしましたかー?
「今はこんにちはだ、この遅刻魔。
朝練までサボリやがって・・・!ざけんなよ!」
「うっ!それは悪いと思ってる!!!
ごめーんなさーい」
「本当にそう思ってんなら俺の目を見て言え大馬鹿者。
窓の外の景色見ながらいう台詞じゃねぇよな。
だいたいお前は・・・あークソッ!!!もぉいい!」
あれ・・・?いつもならもっと言われるのに・・・。
途中で言葉を止めるなんて珍しいな・・・。
ここでも違和感。
一体このクラスに一晩で何があったんだろう。
アタシはその答えを、昼休みに知ることになる
「千代ちゃーん!一緒にご飯食べよう!!」
「ねぇさん」
「はい?」
声をかけられた事にさほど驚きもせずアタシは千代ちゃんと机をくっつける。
クラスの女の子だ。
数人固まってるけど、一体なんだっていうんだろう・・・。
失礼かと思ったけどアタシは顔を上げずにお弁当を開く。
や、だって空腹なんです。
朝ごはん食べてないんです、急いでたから。
ちなみに今日のお弁当は昨日作ったサンドウィッチだ。
アタシは視線だけで言葉の続きを促す。
相手はそれでわかったみたいで、口を開いた。
その口から出た言葉に、アタシは思わず呆け顔を上げた。
「え・・・?ごめん、今なんて?」
「だーかーらッ!!
さん阿部くんに告白されたって本当なの!?」
情報早すぎだろ!!!!!
あれだ、近所のおばさん並だな!!!!
というかどこから情報がもれたんだろう・・・。
阿部からいうことは絶対ないしさ・・・。
千代ちゃんもこんなこという人じゃないもんね。
アタシは迫ってくる女子達に耐え切れず
思わず「う、うん」と返事をしてしまった。
返事をしながら阿部を見ると、アイツはこっちを睨んでいた。
その視線は「馬鹿かお前」と言ってる様で・・・。
あ、しまった・・・。
阿部の視線の意味に気づいた時にはもう遅くクラスがいっせいに騒がしくなった。
男子が確かな情報を掴んで満足したのか、ひやかしてくる。
女子も女子で興味津々といった感じだ。
アタシたち二人はクラスでもかなり目立った存在だ。
だって日ごろから口論をし、そのせいで先生にもよく怒られている。
そんなアタシたちが告白し、告白された。
それはもう、クラスにとってものすごくおいしい話題だったんだろう。
その証拠にずいぶん食いつきがいい。
千代ちゃんを見ると、困ったような顔をして笑っていた。
あぁ、千代ちゃんもこのクラスの様子に気づいてたんだ・・・。
阿部はあたしが来るまでに散々聞かれたんだろう。
だから眉間にしわがよってて不機嫌そうだったのか。
違和感は拭えたけど、新しい問題発生だ。
アタシはこれからしばらくのことを考えて頭が痛くなった。
騒がしくなった教室の中。
持ってきたサンドウィッチをかじりながらそんな事を考えた。
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