あれれれ?
おっかしいなぁ・・・
彼女と彼と青空と
30*怒りと
「え、マジでまたここ?」
「マジでまたここだ」
説教の後つれてこられたのは社会科準備室。
どうやらここを掃除しろということらしい。
正直言うと・・・
「い、いやだ・・・」
ここの掃除の大変さは身をもって知っている。
あのホコリ・・・空気の悪さ・・・。
ヤバイ、やる前から気持ち悪くなってきた・・・。
というか、早くも大量のホコリがあるのは何でだろう。
アタシに対してのいじめとしか考えられない!!
そんなアタシをみて、担任はため息をつくと、真剣な顔で言った。
「・・・お前よく考えてみろ」
「はぁ・・・なんスか?」
「窓からは中庭が見えるだろう?」
「あんたそれ前も言ったよ!!!!!」
本当それがどーしたっていうんだこの教師は!!!
中庭が見えることによってあたしに何のメリットがあるのかが分からない!
アタシがぎゃーぎゃー講義していると、担任はめんどくさそうに頭をかいて
その後、笑顔でこっちに向き直った。
「じゃぁ鶴岡と一緒に図書室の本の整理でもするか?」
「・・・・・・・それは、遠慮シマス」
あんなヤツと一緒に掃除するなら、ここの掃除する!!!
結局アタシは、ここの掃除をすることに決めた。
担任に渡された箒や雑巾、バケツなどの掃除道具を持ったアタシは
まさしく掃除のおばちゃんと呼ぶにふさわしい・・・。
あはは、おかしいな、何でだか涙が出そうだよ。
「じゃぁ、この部屋の掃除、頑張ってやれよ。
好きな時間に帰ってもいいけど・・・・
この部屋の掃除が終わるまでが罰だからな。
今日終わらなかったら明日も来い、いいな?忘れるなよ」
「うぃ〜・・・了解っす・・・早めに終わらせます」
やる気のなさそうに片手をあげて、出て行く担任を見送る。
早く出て行け!鬼は外だ、鬼は外!!!
そう思った瞬間、担任の動きが止まる。
やばっ!?考え読まれた!?
アタシは瞬時に身構えると、次の行動をうかがった。
担任はゆっくりこっちに振り向くと、少し笑う。
その笑顔に邪気がなくて、なんだか拍子抜けしてしまったアタシは
警戒を解くとポカンとした表情で担任を見た。
なんでそんな顔をされるのかが分からなかったのだ
「言い忘れてたけどな、」
「はっ、はい!なんですか!?」
「人の気持ちなんかシンプルなもんだ。
何悩んでんのかしらないけど、考えすぎるな。
自分の中の、最もシンプルな気持ちを見てみろ。
面白いことが分かるかもしれないぞ」
「―っ!?」
言うだけいうと、アタシの返事も聞かずに担任は出て行った。
「じゃー掃除頑張れなー」と気だるそうに言ってから・・・。
それを見送ると、アタシは床にペタンと座り込んだ。
ばれていた・・・。
ちくしょー、あの人普段悪魔なんだけど、鋭いんだよなー。
この前も、他の生徒の悩み見抜いてさりげなく励ましてたし・・・。
なんていうか・・・すっごいなぁ・・・そんでもってちっと悔しい。
アタシはしばらくその場に座って自分のシンプルな部分を探したけど
結局見つからなかったから掃除を始めた。
アタシが気づかないふりしてる、シンプルな部分ってなんだろう・・・。
「よぉ、掃除ゴクローサン」
ホコリも取り終わって、さぁ本の整理だという時・・・
入り口から知った声が聞こえてきた。
・・・・・・・・・ぎゃー阿部様だー。
その声に反応して、肩がビクリとはねてしまう。
でも振り向いたりはしなかった・・・なんとなくできなかった。
「まぁ・・・それほどでも・・・ない、よ」
「お前が俺のことで怒ったって泉と水谷から聞いたぜ。
なんつーか、サンキュな。
そのせいで、掃除の罰とかやらせてわりぃ」
「別に、大丈夫。
アタシが好きでやったことだし・・・自分の責任だから」
「そ?」
「そ」
こっちに歩いてくる音が聞こえる。
ドキドキと心臓がなった。
アタシはその足音から逃げるように・・・
本の整理をするフリをして少し離れた・・・あんま意味ないけど!
くそー、なんでこんなところに来たんだよこの人はー!
今ケンカ中でしょ!?
・・・・・・・あれ?怒ってるのはアタシだけだったり?
うわもぉ、かなり馬鹿みたいだ!!
そうだよね、あの時だって怒って帰ったのはアタシだもん。
阿部怒ってなかったもんね・・・。
何やってるんだろう、アタシ。
ハーと吐き出したため息が阿部と重なって、思わず顔を合わせる。
けど、アタシはすぐに顔をそらした。
え、それ何のため息?
「この前は、あー・・・ワリィ。
俺が考えなしでモノをいったのが悪かった。
普通あんな事いわれりゃ、誰だって傷つくのにな」
「いいよ、き、気にしてないから。
その・・・謝らなくて・・・」
「・・・・・・・・本当に気にしてねぇの?」
「うん、本当に・・・」
適当な返事を返しながら、本を抱える。
これは・・・どこに入るやつだったけ?
あ・・・これ一番奥の本棚だ。
やだな、そこまで行くには阿部の横を通らないといけないのに。
「なら・・・ちゃんとこっち向いてみろよ。
お前さっきから俺と目ぇ合わせねぇようにしてっだろ」
「・・・・・・・気のせいじゃん?」
アタシはそういって、阿部の横を通り過ぎようとする。
その瞬間、腕を掴まれて元いた場所に軽く投げられた。
といっても、押し戻されるような感じだけど・・・。
アタシはそれに驚いて棚に背中をつける。
足もとに、本がバサバサと落ちた。
あーあ・・・学校の本なのに・・・。
アタシが驚いている間に阿部はこっちに歩いてきて
あたしが逃げられないようにと棚に両手をついた。
ドンッ!となった音に、今の阿部の感情が表れている。
「どこが気のせいなんだよ、あぁ?」
うわー、やばーい、めちゃ怒ってるー・・・。
青筋、青筋でてるよ阿部・・・。
「いや、阿部・・・ちょっと待・・・」
「お前いっつもそーだろ!?
んでそーやって逃げんだよ!!!ちったぁ向き合えよ!!」
「っ!?む、向き合ってるじゃん!!!
今だってこうやって・・・」
「それは俺がこーしたからだろ!?よく考えてみろ!!
お前は逃げる側だからいいかもしんねぇけどな!
逃げられる方がどんだけ傷つくと思ってんだこのタコ!!」
「タ・・・!?」
反論しようと思って、思わず言葉を飲み込んだ。
阿部が、怒ってるんだけど、どことなく苦しそうな顔をしてたから。
意味が分からなくて、頭が混乱した。
けど、これだけはハッキリ分かる。
そんな顔させてんのは・・・アタシなんだ・・・。
「なんで・・・アンタがそんな苦しそうな顔してんのさ」
「っ!?、お前本気で分かってねぇの?」
「な、なにが?」
「コノヤロッ!!!だから・・・!!!」
阿部の顔がいっきに近づいた。
それにドキッとしてしまう自分がいる。
「お前のことが好きだっていってんだよ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
今なら地球滅亡だってありえると思った
back ▲ next
|