お前らのせいじゃないけどな・・・



だけど一発殴らせてくれ!!





彼女と彼と青空と
28*失言 映画館に着くとまず、腹へった腹へったとうるさい のためにポップコーンを買ってやった。 するとはジュースを買っていて、俺に一つを渡すと ありがとうと、いって笑った。 お互い様だろ・・・。 「阿部!ここ!!ここ座ろう!ここがいい!!」 「分かったから騒ぐな!うるせぇ!」 小さい子みたいにはしゃぐに連れられて席に着いた。 今日はわりとすいてて、真ん中の列の席を取ることができた。 ・・・・・つか、今日たまたま空いてたんじゃなくて この映画を見に来るやつがいないんじゃねぇの? そう思いながら隣を見ると、何が楽しいか知らないけど やけに上機嫌のが、ポップコーンをバリボリと噛み砕いていた。 映画始まる前からんな食ってどーすんだよ、コイツは・・・。 「うは、楽しみー!早くスクリーンに阿部が映らないかな!?」 「お前は本当に失礼なヤツだよな。  スクリーンに映んのは俺じゃなくて幽霊だこの大馬鹿者」 「どっちもたいして変わんないじゃん」 「だいぶ違う!!!」 今コイツを本気で殴りたいと思った。 誰が幽霊だ!!誰が!!!!むしろそれお前だろ!! 殴りたい衝動をどうにか抑え込んで、席に深くもたれこんだ。 そうして小さく息を吐くと、再び隣を見る。 は相変わらずスクリーンをみて楽しそうにしてる・・・。 ・・・・・・くそっ、ちょっとはこっち向けよ・・・って! 何考えてんだよ、俺!! あー、畜生!コイツを意識しだしてからどうもおかしい。 らしくねー・・・・。 まっ、そんなことは置いといて・・・・。 俺は昨日渡されたチケットを思い出す。 あの時は、こんな怖そうな映画、コイツに観れんのかよ。 なんて思ったけど・・・この様子なら大丈夫そうだな。 そう思って俺はなんとなく安心した。 でも俺はみた。 映画の最中、の顔が引きつってたのを・・・。 「アッハハハハハハハッ!!!」 「わわわわわ笑うなーーー!!いい加減笑うの止めろー!!」 「だって、おまっ、あんな、映画館で・・・ブッ。  クククッ、あー、やべぇ!笑い・・・っ、とまらねっ!」 「仕方ないじゃんか!!予想以上に怖かったんだから!!」 「どっちかっつーと、映画よりもあの時のお前の顔の方が  怖かったと思うけどな、俺は」 「ほっとけこのウニ頭ー!!!」 はさっききたばかりの食後のコーヒーもほったらかして 真っ赤になりながら反抗してきた。 ちなみに今は映画を見終わったからファミレスにいる。 どうやらしばらくは、ここで休憩するらしい・・・。 まぁ、それよりも今俺が笑ってる理由だけど・・・。 原因はもちろんにある。 アイツは映画が終わった後、あろうことか映画館の中で叫びだした。 よほど怖かったのか涙目になって・・・。 「よしっ、出るぞ」 「・・・・・・」 「?・・・おい、?」 映画が終わったっていうのに、はいつまでもスクリーンを見ていた。 まるで俺の声なんか聞こえてないみたいだ・・・。 何やってんだ、こいつ。 不思議に思って俺は声をかけながら肩を軽く叩いてみる。 「おい、、どうし・・・」 「ギャーーーー!ごめんなさいぃーーー!!!」 「・・・・・・・・・・」 一体コイツは何に謝ったというのか・・・。 まぁなんにしろ、館内に爆笑の渦が起こったのはいうまでもない。 「普通叫ぶかー!?いくら怖かったからって・・・!!」 「あーもぉうっさい!!いつまでもそのネタひきずらない!!」 「よしっ、明日栄口にも話といてやるよ」 「人の話聞いてた!?ねぇ!!!」 本当勘弁してよーといったは半泣き状態だったので そろそろからかうのを止めてやる。 泣かれたら俺どーしていいかわかんねぇし。 つか・・・あー、おもしれ・・・大声出して爆笑なんか久しぶりだっつの。 目じりにたまった涙を拭くとがにらみつけてきた。 けど涙目になった真っ赤な顔でにらまれても迫力に欠ける。 それに気づいたのか、はにらむのを止めて おそらくだいぶ冷えてしまっただろうコーヒーを飲んだ。 「っていうか・・・阿部だって肩ビクッてなってたじゃん。  アタシだけじゃないもん・・・」 「なっ!?お前気づいて・・・!?」 「当ったり前でしょ?このアタシの洞察力をなめるなよ?」 「映画館で叫んだけどな」 「それ関係ないし!!ていうか、言うな!!!」 そんな会話をしながら何分たっただろう? 気がつけば自分達のカップの中は空になっていた。 このまま話し続けるなら、もう一度注文しようか、なんて迷ってた時だった。 「おー、阿部とじゃん」 突然背後から聞こえた声に振り向けば、クラスの男子3人が立っていた。 あー・・・見られた・・・なんかややこしい事になりそうだな。 そう思った俺の予想を裏切ることもなくあいつらはニヤリと笑うと口を開いた。 「なーに?阿部くんとデートですか?」 「仲いいなー!お前ら!」 「バーカ、そんなんじゃねぇよ」 「いやいやー、照れんなって!俺らちゃんと分かってるからさ!」 「照れてねぇし、何一つわかっちゃいねぇなヲイ」 そういったって、まぁ・・・こーいうやつらが聞くはずもなく。 「そう言うなよ!つか実際どーなん?  お前ら付き合っちゃってんの?」 「ハァ!?何言って・・・」 「だって仲いいし、休日デートまでしてんじゃん。  むしろ付き合ってない方がおかしいだろー」 「いや、だから・・・」 「正直言ってみ?誰にも言わないから!」 「あのなぁ・・・」 「はい、カップル誕生です!!おめでとー!」 悪意がないのは分かってんだけど、それが嫌で・・・。 こいつら完璧遊んでるなって思うと、イライラしてきた。 それで、俺は騒いでる声を静めるように・・・わざと口調を強くして言った。 「うるせーんだよテメェら!!誰と誰が付き合ってるって?  俺がコイツと付き合うとかフツーにありえねぇだろ!!」 ガタンッ! 言い終わると同時に聞こえた物音でふと我に返る。 恐る恐る前を向くと、が机に両手をついてうつむいて立っていた。 ・・・・・・・・・やっべ、俺・・・なに言って・・・。 「帰る」 ひどく低い声でそういったはスタスタと店を出ていってしまった。 後ろの男子が戸惑ったように、あー、とか、えーっと、とか 特に意味のない言葉を発している。 俺は追いかけることもできなくて ただ呆然とが出て行ったドアを見ていた。 ほらみてみろ、やっぱりややこしいことになった。 back  next