そのたいおんが
すごくここちいいのです
彼女と彼と青空と
24*怪我
「はい、これでいいかな」
「あっ、すみません。
どうもありがとうございます!」
「それはこっちの台詞ですよ。
変質者を捕まえてくれたんですからね」
そういって話す警察の人はまだ30代といった感じで
見た目から、凄く優しそうな人だと判断できた。
アタシが腕を怪我しているのに気づいたその人はさっさと傷の手当をしてくれた。
まぁ包帯とかそんなん何もってないって言ってたからアタシの鞄の中に入ってた、
今日買い出しに行った部活用の包帯やら薬やらを使ったんだけど!!
あぁ、これでまた明日も買出しだよチクショー!
幸い傷はそんな深くないらしく、安心してくださいっていわれました。
でも安静にしていてね、君凄く元気そうだからともいわれました。
アッハハハハハハ!!
よく分かっていらっしゃる・・・!!
傷の手当も終わってさてこれからどうしようかと思っている時だった。
「!!!!」
阿部の声が聞こえてきたのは。
少し離れた場所に自転車を止めてこっちに向って走ってくる阿部。
うわっ、凄い息切れしてるよ・・・大丈夫かな?
「あっ、阿部・・・!」
「ワリッ・・・遅くなって・・・。
大丈夫・・・・・・か・・・・・・・って」
「?」
「おい、お前、その腕の包帯なんだよ・・・」
阿部が指差す包帯部分をチラッとみてから、あぁ、これのことかと納得する。
うーん、どうしようなぁ・・・言うべきかなぁ・・・。
でも言ったら絶対コイツ怒るだろうしなぁ。
いつもみたいにグチグチ説教されるんだきっと!
いや!!そんな疲れることは嫌!!!
アタシの中で言う=説教=疲れるの方程式が完璧に出来上がる。
よし決めた、ごまかそう。
「いや、これは帰り道にこけて・・・」
「あぁ、それは男と戦った時にナイフがかすったそうですよ」
うおぉおぉい!!!!ちょっとォォォォ!!
何早速ばらしてくれてんのさ警官様ぁぁぁぁ!!!
勘弁してくれよ!!
地獄見せる気か貴様!!!
「戦った・・・?ナイフ・・・?
おい、・・・お前逃げずに立ち向かったのか?」
「えっ、いや、その、なんだ!
ちょっ、ちょーっとだけね・・・!
最終的に鞄投げつけたら相手伸びちゃったんだけど・・・。
アッ・・・アハハハ」
「・・・・・・・・・・・そーか」
ん?あれ?
てっきり怒られるもんだとばかり思ってたのに。
嫌に静かだなこの人・・・。
どーしたんだろ?
変な沈黙が続いていた時
警察の人が「ではこれで、本当にありがとうございました!」
みたいなことを言って変質者を連れて帰っていった。
だから残ってるのはアタシと阿部なんだけど・・・
え?ちょっとどーしようこのへんな空気!!
「えーっと・・・阿部さん?
どーしたんですか?」
「んで・・・」
「?」
「何で逃げねぇで戦ったんだよ!!馬鹿かお前は!!」
ビクッ
物凄い怒鳴り声だ。
怒って・・・る・・・。
あぁ、そっか。
あの時は警察の人がいたから、怒るの我慢してたんだね。
ごめんよ、阿部。
手、力入れすぎて白くなってるよ?
「ごめん・・・・・・」
「自分は強いとかいっときながらバッチリ怪我してっし。
俺がアレだけ注意したのにこんな暗い道通るし。
本当お前は何考えてんだ!!!!
ちったぁ考えて行動しろ!!!!
自分だけ安全なんかありえねぇんだぞ!!!!」
「・・・・・・うん。
でも、ほっ、ほら!怪我したけど結局勝ったしさっ!
大丈夫、大丈夫!!」
「だからっ・・・・!!!!!」
ギュッ
無理に笑ってごまかしていると急に阿部に腕を引っ張られた。
アタシは逆らうこともできずに阿部に抱きしめられる。
心臓の音が聞こえる。
すこし、速い。
アタシの肩におかれた阿部の頭。
背中に回された腕。
おいおい、なんだこの状況。
物凄く恥ずかしいじゃないか、顔が熱いぞコノヤロー。
そんなアタシなんかお構いなくむしろ気づいてない様子で阿部が喋り始める。
ちょっと止めてエロボイス、近いんだって。
心臓もたないってマジで。
死んじゃう死んじゃう!!
「そーいうことじゃなくって!
どんなに強かろうとお前は女なんだから!
頼むから・・・もぉこんなことすんな」
「うぇ?あっ、あの・・・阿部?」
「返事・・・」
「・・・・・はい」
「ん」
本当はこの状況をどうにかしようと思ったんだけど。
できなかったんだ。
だって、返事、っていった阿部の声が
この前とは違って凄く静かで、凄く真剣だったから。
それと、このあたたかさが凄く安心できたから。
恐怖がなくなってしまうぐらいのあたたかさ。
あーなんだこれ。
本当すっごい安心する・・・。
少しすると阿部はアタシを離して背中を向けて、帰るぞ馬鹿、って言った。
あれ絶対照れてんだよ。
だって阿部は照れた時顔見せ無いもん。
それがおかしくて笑うと、頭を鞄で叩かれた。
痛い・・・。
アタシは歩きだったから阿部の自転車の後ろに乗せてもらった。
「重い、沈む、進めねー」っていいやがった。
あのたれ目の背中をグーで殴って出発。
きっと傍から見ると変な光景なんだろうなって思う。
だってアタシも顔が熱くて、真っ赤なはずだから。
見られてなくて、よかった・・・デス!!
back ▲ next
|