アッハッハッハ
アタシの注意不足ですね
彼女と彼と青空と
23*対決
その時あたしは、コンビニに寄って肉まん一つと烏龍茶
を買って歩きながらもぐもぐ食べていた。
あー、おいしいですなー肉まん!!
やっぱり肉まんっていうのは小腹がすいた時の救世主だね!!
なんて考えてテンションが上がってたハズだ。
でも今、その上がったテンションはどこかに消え去ってしまった。
異変に気づいたのは肉まんを全部食べ終えて少したってからだった・・・。
街灯がチラチラともっている程度で人気もない道をアタシは歩いていた。
こっちの方が家に早く着くからだ。
するといつの間にか足音が増えていた。
アタシと
誰か。
後ろを振り向くとキャップを被った男の人が
音楽か何かを聴きながら歩いている。
アタシは特に気にすることも無く前を向いた。
でもその時何かが足に当たった
ペシッという音とともにぶつかってきたそいつは結構痛い!
何!?何て思いながら足元を見たけど・・・・・・
なんてことはない、ただ靴紐がほどけただけだった。
めんどくさく思いながら立ち止まって靴紐を結ぶ。
けどそこで気づいたんだ・・・・・。
足音が・・・なくなってる・・・・・?
え・・・?何?なんで?
いや、道それたのかもしれないし。
うん、そうだ、きっとそうなんだ!!
そう思い込みながらもう一度振り向くと
そこには止まってこっちを見ている男の人。
ドクンッ
心臓が大きく脈打った。
体がまるで自分のものじゃないみたいに硬い。
嫌な汗が背中を伝う。
これは確信じゃないけど確信に近い勘。
アイツが・・・うわさの変質者だ・・・・・・・・。
とりあえずアタシは何事もなかったように歩き始めた。
早歩きをしながら。
自分の歩き方が、今とてつもなくぎこちなく感じる。
どうしようどうしようどうしよう!
こんなに怖いものだとは思ってなかった。
冷静に対処できるものだと思ってた。
本当・・・・馬鹿だアタシ・・・。
怖い、何これ、なんなのさ!
何でアタシが早歩きだと後ろも早歩きなのさ。
アタシ可愛くないし、色気もないし
足短いし、最近ちょっとお腹に脂肪がついてきたし
そんなアタシ襲ったってどうすんのさ。
もっと他に可愛い子いっぱいいるってば!マジで!
嫌だ・・・嫌だ・・・助けて・・・誰か!
お願い!誰か助けて・・・!
阿部・・・!!
気がついたらアタシは携帯を耳に当てていた。
聞こえるのは呼び出し音。
お願いお願い、早く出て!緊張で死んじゃいそう!!
『もしもし?』
アタシがいる場にそぐわない
なんとも間抜けでめんどくさそうな声が聞こえた。
その声が聞こえた瞬間、アタシの中に安心感が満ちていくのを感じた。
「阿部!?」
『当たり前だろ。
お前は誰の携帯にかけてきてんだよ』
「うん、ごめん・・・ごめんよ・・・」
『おい、・・・・?お前・・・どうした?』
「阿部、お願い・・・助けて」
『!?』
あっ、ヤバイ、思ってた以上にか細い声になった。
でも本当に泣きそうなんだ。
アタシは今、不安と戦っている状態で
そんな状態の中で強がるなんて、到底できなかった。
自分がこんなに弱いだなんて・・・。
『何かあったのかよ!?』
「後ろ・・・男の人がついてきてて。
アタシ、怖くって・・・あぁ、どうしよう阿部!」
『こんの馬鹿!!あれほど・・・っ!
クソッ!お前今どこ!?』
「公園の近く・・・・ほら川の近くにある・・・・キャッ!?」
そこまで言って、不意に肩を掴まれた。
驚いて振り向くとそこには追いついたらしい男の人。
しまった・・・!?
こんなに近くに来てたなんて!!
驚いた拍子に携帯を地面に落としてしまった。
あぁ、あの安心した声が、今はこんなにも遠い。
一瞬で両手をとらえられてしまった。
何とか逃れようともがくけど、さすが男。
力が強くて逃げられない。
「嫌っ!離して!!」
そういって離れるんなら皆苦労はしないよね。
どうなるんだろう、アタシ・・・。
凄く怖いよ、どうしようもないじゃんか。
こんなの、逃げられない・・・・!
「大丈夫、アタシ強いから」
・・・・・・・・・・・強い?
そうだ、大丈夫だよ。
落ち着いたら、何とかなるかも。
大丈夫、男はアタシが弱いと思ってるんだ。
その隙をついてやれば・・・!
あー、これ痛いからあんましたくないんだけど・・・
この場合は、仕方ないよね?
「離してっ!!!」
ゴツンッ!!
(――――――――――っぅ!!)
したのは頭突き。
本当に痛いな、これ!!
でも、おかげで大分目が覚めた。
怖くないっていったら嘘になる。
足なんか震えてるし、体だってまだまだガチガチだ。
けど、戦えなくは無い。
守るんだ、自分を。
男と向き合って、迷いを無くす。
怖い、大丈夫、できるさ、大丈夫。
なるべくプラス思考に、自分に暗示。
そうしてまだふらふらしてる男の頬をグーで殴る。
するとそれが男のしゃくに障ったのか
ポケットからナイフを取り出してきた。
うっわっ!?きったなっ!
でもそのナイフなんかカッコいい。
なんて馬鹿なこと思いながらも、さすがにこれはヤバイ
って全身が教えてくれる。
すばやい動きで男がこっちに向ってナイフを突き出す。
寸前の所でよけきった。
・・・・・・・・・・つもりだったけど失敗失敗。
腕にかすったらしく、血が出てくる。
そこだけが熱を持ったみたいに熱い。
ドクンドクン
心臓の音が聞こえる。
しかもその後蹴り飛ばされたんだからたまったもんじゃない!
腹が痛いよ、ちょっとぉ!
くそっ!足が震えてる。
やっぱ駄目だなアタシ。
だんだんと男が迫ってくる。
・・・・・・ここまでなんでしょうかねぇ?
でもアタシ結構頑張ったよね?
誰か褒めてくれー。
諦めかけていたその時遠くからサイレンの音が聞こえた。
男が慌てたようにサイレンの聞こえた方向を向く。
今だ!!!
「隙みせちゃ・・・だめでしょっ!!!!」
そういって近くにあった自分の鞄を全力投球。
ちなみに、英和辞典入り。
それが男の頭にクリーンヒットして男が地面に倒れる。
そうして気絶してしまったみたいだ。
多分地面に倒れた時の衝撃と鞄が当たった衝撃がダブルできたんだろう。
お気の毒に。
まぁ、そんな事思ってないけどね。
ハァとため息をついて全身の力を抜く。
まるで息をしていなかったかのように、息が苦しかった。
学校でグランドを何十週も走った後みたいに汗が酷くて、息が切れていた。
遠くに聞こえていたサイレンの音がいつのまにか近くなっていた。
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