なっ、何もそんなに怒鳴らなくても
ねぇ?
彼女と彼と青空と
20*提案
「テストおわったぁー!!」
その男子の一言をきっかけに皆が騒ぎ出す。
「私できなかったー」とか「あの問題出た!?」
なんて友達同士で自分の思いを確認しあっている。
それは我が野球部メンバーも例外じゃなく
横では最後のテスト、英語の答えを合わせていた。
アタシはもうどうしようもなく眠かったから
そんなテンションも上がるわけなく・・・・うぅ・・・
早く帰って寝たいよー・・・。
「なぁ、」
机に突っ伏してるアタシに遠慮も無く話しかけてきたのは隣の席の阿部だった。
うっさいよこのタレ目くんは・・・!
「お前問4の(3)の単語何が入った?」
「あ゛?“Don't anybody speak!”」
「単語だッつってんだろーがァ!!!!
そりゃ文章だろ!!
お前絶対答える気ないよな!?」
「うるせー、怒鳴るなー、こっちは二日酔いなんだよー」
「嘘をつけ。
大体女子高生のお前が何に二日酔いするんだか・・・」
「え?君に?」
「有害物か俺は」
まぁ結構な有害物だよねって言いかけて止めた。
だって眠いんだもん。
喋るのもめんどくさいっすわ。
お願いだから・・・寝かせてー・・・・・・。
「あの、ちゃん・・・?」
ガバッ!!
「早っ!!」
可愛い声が聞こえて勢いよく顔を上げるとそこには千代ちゃん!!
隣で水谷のツッコミが聞こえたけど無視しておこう。
だって、こんな可愛い子をあしらえるわけが無い!!!
アタシまだそこまで人間落ちてないよ!!多分!!
「ん?どーしたの?」
「あのね、聞いて欲しいことがあるんだけど・・・」
「うん、いーよー!場所変わる?」
「ううん、大丈夫!あの。実は・・・・・・」
「畜生!!!!男なんて皆そんなものなのか!?」
「んなわけあるか!!頼むから落ち着いてくれ」
「だって阿部!!!千代ちゃんがっ!!」
そう、さっき千代ちゃんに聞いたんだ。
昨日最近出るらしい変質者に後をつけられたんだって。
気のせいかな?って思っても、いつまでもついてくる。
だから怖くなって途中から走った。
そうしたら、一緒に走ってきたらしい。
人通りの多い道に飛び出して何とか助かったんだって。
うぅ〜・・・まさか千代ちゃんにまでくるとは・・・。
正直予想外だなぁ・・・。
クラスの女の子が泣いてた時も何となく、
自分とは関係ない世界みたいな感じでみてたから。
(人ってそんなものでしょう?)
でも被害が友達まで来たんじゃ他人事じゃないっしょ。
さてと、どーしたもんか・・・。
千代ちゃんはしばらくは友達と一緒に帰るんだって。
友達が無理な日は人が多いところを通って帰るらしい。
仕方ないよね。
そんな怖い目にあったんだもん。
アタシが駅までついていこうかって聞いたけど
さすがにそこまではさせれないって断られちゃった。
くそぉ・・・ストーキングでもするか?
男性陣もさすがに少し考えてるらしい。
でも表情を見る限りじゃ良い案は浮かばないっぽい。
・・・・・・・・・・チッ、使えねぇー。
「おい」
「はい?」
「お前今使えねぇーとかって思わなかったか?」
「おおおおおおお思っておりませんとも。
いやだなぁ何を仰るんだか阿部くんは!!」
「だって口に出てたし」
「ガッデムッ!!!!!早く言え!!!」
遊んでいらっしゃるよね!?そーだよね!?
ムッキー!!何てやつだコラー!!
なんて一人で怒ってたら眉間に何かが触れる。
それが阿部の人差し指だということに気づくまで、そう時間はかからなかった。
って、え?は・・・?何で?
何この状況?
「そんな顔ばっかしてんなよ。
眉間。しわ残るぞ」
そう言ってからスッと阿部の指が離れる
・・・・・・・・・・・・
「で?どーすんだよ?」
「ほわちゃぁぁぁぁっ!!!」
「何!?」
「今のは阿部が悪いだろ」
「うん、阿部が悪いよね」
「なんでだよ!!!」
物凄い勢いで机に突っ伏したアタシを
阿部が不思議そうな顔で見てるのが分かる。
でも顔・・・・上げれませんからっ!!!
あっ・・・あつい・・・。
どうしよう、今絶対顔赤い。
だってあんなこと・・・!普段しないのに!!
これが噂の不意打ちというやつか!?そーなのか!?
畜生まんまとやられたぜハハン☆
あーでもそーさなぁ・・・。
千代ちゃんどうしよう・・・。
一応言葉はかけといたけど大丈夫かな?
夜にでもまたメールしとこう。
また誰か怖い目見るのかな・・・?
何もしてないのに?理不尽だ。
全く、警察は何をしてるんだか・・・・・・。
女装してでも捕まえる心意気を市民に見せろ!!!
やばい。
考えすぎてそろそろ頭が回らなくなってきた。
だぁーもぉめんどくさい!!!
いっそ誰かが捕まえたら終わるのに!!!
・・・・・・・ん?
“誰かが捕まえたら”・・・・・・?
「それだぁっ!!!」
「「「はぁ!?」」」
「アタシたちの誰かが犯人捕まえたらいいんじゃん!
そうしたら事件も終わるよ!?ね!?」
「「「・・・・・・」」」
「あっ・・・あれ・・・?」
なっ、何だろう・・・この無駄なぐらい重い沈黙は。
アタシなんかへんな事言った・・・?
「あのな、
得意げな顔してた所大変申し訳ないけど・・・。
全く名案じゃないから」
「えぇ!?何でだ坊主!!」
「危ないからだよ」
「あ・・・ぶないか・・・?」
「あぁ、お前が思ってるよりずっとな。
そーいうのは警察に任せとけばいいんだよ」
「でっ、でも!!!」
これ以上被害増えたら嫌だし・・・。
それに・・・分かんないよ・・・男子になんかさぁ!!
多分膨れ面をしていたんだろうアタシに
阿部は自分の鞄を持ち上げながら言った。
「いーか!絶対にお前は一人でつっこんでくなよ!?
マジで危ねぇんだからな!!!」
「・・・・・・」
「返事!!!!」
「はっ、はいぃぃぃぃっ!!!」
「よしっ、じゃぁ俺帰るわ」
「おう、じゃぁオツカレ。
俺達も帰るかー」
「だね、んじゃぁ、オツカレー」
「・・・・・・・・オツカレ」
あっ、阿部の怒気に負けてしまった・・・。
声でけぇ。
声こえぇ。
何あの声!?どっからでてるの!?
っていうか負けちゃ駄目じゃんアタシー!!
はぁ・・・もぉ、どーすればいいんだよぉ・・・。
アタシはそのまま頭を抱えるようにして
さっきと同じように机に顔を伏せた。
アタシ意外誰もいない教室が静かにそこにあった。
back ▲ next
|