本当にこの人は



いろんな意味で面白い





彼女と彼と青空と
19*心配性 ざわざわと教室の中が騒ぎたっている。 そんな様子はいつもの事なんだけど今日は何かが違う。 女子のほとんどはある一人の女子の机の周りに集まって 男子はそれを少し離れたところで見ている。 アタシは教室に入った瞬間のいつもと違う空気をおかしく思って そっと女子の横を通り抜けて自分の席に向かう。 そこにはお馴染の野球部メンバーと千代ちゃんもいて 皆同じように女子の集団を見ていた。 ちょっと腰を低くして、座ってる阿部に近づくと状況を確認した。 (その時阿部の顔がウザそうだったのは見なかったことにしておこう) 「えっ?何ですかあれ、なんかの宗教団体?」 「んなワケあるか!  クラスの女子のほとんどが一晩のうちに  どっかの宗教に入るなんて奇怪がある分けないだろ!?」 「いや、ひょとしたら・・・」 「嫌すぎるな、そんな“ひょっとしたら”なんか」 うん、アタシも今そう思ったとこなんて言いながら女子の集団に目を向ける。 と、中心にいる女の子がチラッと見えたんだけど・・・。 なんか・・・・あれって・・・。 「泣いてる・・・・?」 「うん、泣いてるんだよ」 「えぇっと・・・阿部が泣かしたとか?」 「何故そう繋がる」 「アハハ!違うよ!  阿部くんじゃなくって、えっとね・・・」 「変態に襲われたんだってよ」 「えぇ!?アタシ何もしてない!!!」 「誰がお前だって言ったよ!?  つか変態=自分だって出てきた時点で悲しくないのか」 ごめん、咄嗟にでてきたんだ。 あぁそうさね、悲しいよ。 物凄く悲しいさ畜生め!! 「でも変態ってことは・・・変質者?  最近でるんだ・・・」 「おい  お前昨日俺が何で送って帰ったか理由聞いてたか?」 「おうよっ!!!!」 「・・・・・・・・・」 ゴッ!!! いっ・・・痛い・・・・・っ! なんで!?何で殴るの!? ちょっとからかった?ん?冗談言った?だけだったのに!! 殴るとか!殴るとか・・・・・っ!!!! 女子にすることじゃないだろ貴様ァァァァァッ!! どうもアタシの周りの男子はアタシを女子だと理解してない人たちが多いらしい。 よく殴られるものね! まったく!! このホームズもビックリ☆の頭脳が死んだらどうしてくれるんだ! ・・・・・・・・・すみませんごめんなさい 調子に乗りすぎましたぁ!!!! 「はー、なんか、女子って大変だなぁ」 「なぁ。俺達はないけどさぁ・・・。  女子って結構こういうことあるしね」 「花井も水谷も良くわかってるねぇ・・・。  こっち側は何もしてないのにさ・・・凄いムカツクよね」 「落ち着けよ  お前被害にあったことでもあるわけ?」 「は?いや?ないけど?」 被害にあったように見えてたかな? 別にないよそんなこと。 つか誰もこんな魅力のない女襲わないって話ですから!! アハハハハッ☆ ・・・・・・・・・・それもどーだろう。 どうやらこの女子は近くを通りかかった男の人に助けてもらったらしい。 でも恐怖心なんかそう簡単に消えるものでもないだろうから 多分しばらくは誰かと一緒に帰るんだろう。 それか親に迎えに来てもらうか・・・。 と、その時チャイムがなって担任が入ってきた。 皆ぱらぱらと席につく中担任は一瞬 申し訳なさそうに女子生徒を見た。 ・・・・・・・・・あんたのせいじゃないのにねぇ。 そーいう所は優しいんだから。 意外と心配性なんだよこの人。 「おーいお前ら、明日からテストだな。  そのテスト前に言うのもなんだが、昨日不審者が出た。  いいか、なるべく一人で帰ることを避けろよ。  特に女子!!!自分は大丈夫だなんて思うな」 そういうと一旦黙って教室全体を見渡す。 んで、なぜかアタシと目があうと担任は眉を下げた。 「特に、俺はお前が心配だ」 「え!?はっ!?ア・・・アタシ!?」 「いいか、襲われる様なことがあっても  絶対に犯人は殺すなよ!?いいな!?」 「うぉい、そっちの心配かいこのやろー」 さっすが教師。 さっきまで少し重かった空気が、今ので軽くなった。 うん、いつもの教室だ。 周りでは男子が「そーだぞ」「殺すなよー」なんて 笑いながらちゃかしてくる。 とりあえずあいつ等は後でシメることにして・・・・。 被害にあった女子を見ると、おかしそうに少し笑ってたからそれは安心した。 よかった、笑ってる・・・。 ナイス担任!!!! 女の子泣かせたままとか最悪だもんね!!! その後担任が女子生徒に「お前も泣いてばっかりだったら 明日テストで点数取れなくなるぞー?」って言ったら 今度こそその女子生徒は声を立てて笑って 「それは困りますね」と答えたからとりあえずは大丈夫そうだ。 「明日テストだけど、お前勉強してんの?」 SHRが終わってから急にそう聞いてきたのは阿部だった。 何を面白いことを聞くんだろうか。 このタレ目くんは!!! 「いや、全く!!!」 「そんな元気よく言われてもなぁ・・・」 ため息をつきながら目をそらす。 そうしてしばらく目がうろうろした後に アタシを見てるんだか、その後ろの空を見てるんだか分からない。 ような位置で視線が定まってからちょっと言いにくそうに喋りだした。 「お前・・・大丈夫なの?」 「なっ!?ムッキーッ!!どういう意味じゃコラー!!」 「うわっ!?いや、変な意味じゃなくって  変質者だよ!変質者!!!」 へ ん し つ し ゃ ? プッ 「アハハハハッ!!」 「!?何だよおい!!」 いきなり笑い出したアタシにびっくりしてか 阿部は変な顔でこっちを見ている。 だって!アタシに対してそんなこというとか・・・! プッ・・・面白すぎだってこの人っ!! アタシが笑い続けるのが面白くないのか 阿部はムッとしたまま何も話さない。 アタシはしばらく笑った後に、移動教室の準備を始めた。 教科書とかを持って千代ちゃんの所に行く時 「バーカ」っていったら 「お前がな」って少し笑いを含んだ声が返ってきた。 コイツも意外と心配性だったりしてね。 back  next