本当に
変わったなっておもうよ
彼女と彼と青空と
17*バースデイ
「・・・・・・」
「・・・・・・っ」
「・・・・・・・よし」
「!?」
「完璧だな。帰っていいぞ」
「ぃよっしゃぁぁぁぁっ!!!」
やっと今準備室の掃除終わりました!!
ハウスダストに勝った私。
あっ、やっべ、何か小説のタイトルみたい!!
「じゃぁ帰りまっすね!!マッハで!音速で!!」
「本当に音速で帰れよ?」
「無茶をおっしゃる!!!!」
「嘘だ、暗いから気をつけろ」
「了解です!でわ、さいなら!!」
急げ急げ
鞄を抱えてアタシは自転車置き場まで全力疾走。
走りながら邪魔な前髪を上げてとめた。
かごの中に鞄を放り投げて自転車に飛び乗る。
そうしてそのまま暗い夜道を自転車で全力で走った。
よしっ!目指すは可愛いあの子の家!!
今俺は三橋の家にいる。
本当は勉強会するつもりだったけど多分無理だな。
だって今さっき今日が三橋の誕生日だって分かったから。
今から上に飯とか持ってってパーティみたいなのするらしい。
つか自分の誕生日ぐらい言えよな!!
なんて三橋に少しイラっとした。
それとにも。
アイツ・・・・俺が「知らない」ってこの事だったのかよ。
アイツもアイツで言えよな!!
あークソッ!!イライラする!!!
料理を持って階段を上がる。
っつってもここは人の家だから、階段にやつ当たって
大きい音立てたりとかしねぇんだけど。
本当はすっげぇしたい気分・・・!
駄目だな俺・・・短気すぎる。
こーいうのは直さないといけないんだよな?
でも元だしなーこれ・・・。
たくっ・・・どーしろって・・・ん?
「泉?お前何してんだ?はいらねぇの?」
「阿部・・・」
「あ?」
「アレ・・・」
アレ?何だ?
言われるがままに部屋の中を見るとそこには
ベッドに寝転んで本を読んでるの姿が。
おいおいおいおい。
俺は一体どこからつっこめばいい。
「あっ、阿部と泉じゃん。
何入り口に突っ立ってんのさ。
とっととこっち来なよー、後ろつかえるから」
え、なにこのナチュラルさ。
何でこんな俺たちの方がおかしいみたいな
感覚にされなきゃならねぇの?
「泉、アレは幻覚だ。
ほっといた方が正解じゃねぇ?」
「あー、俺もそう思ったけど。
今の一言でその幻覚が般若のような顔になってるのは
一体どうしたわいいわけ?」
「・・・・・・・」
「あっ、・・・・さんっ!」
「よぉ、三橋!!きったよー!!」
威圧感に耐えてると後ろから聞こえた三橋の声。
その後ろから他のメンバーもぞろぞろと入ってくる。
でも、普通に受け止めてんのは三橋と田島だけで
後はかなりビックリ・・・つか
俺たち同様幻覚を振り切るような仕草をした。
だけど、残念だったな。
この幻覚は消える気配がない。
「三橋、お前となんか約束してたわけ?」
「ちっ、ちがっ・・・さんは・・・」
「?」
「今日三橋の誕生日だって知ってたから
どーせ気づいたらパーティでもすんでしょと思ってね。
三橋に“今日家に行くから”っていっといたの!」
「へぇ、わざわざ祝いに?」
「何いってんの栄口?
ご馳走食べに決まってるじゃない」
「嘘でも祝いに来たって言えよお前は」
「まぁ気にしないで、早く始めよ!」なんて言葉を聞きながら
俺たちは誕生日の歌を歌った。
つっても一番でかかったのは田島とじゃないのか?
二人で肩組んで歌ってたからな。
(隣で巻き込まれてた花井は少し哀れだった)
歌が終わると一斉に食べ始める。
それは俺も同様だったんだけどここで意外な事実が判明した。
「はい、これのケーキ」
「あっ・・・ごっめん水谷。
折角切ってくれたのに悪いんだけどアタシケーキ駄目なんだわ」
『はぁ!?』
「(ビクッ)え?な、何・・・皆して・・・」
「いや、だってありえねぇだろ!?なぁ!?」
「あのがだよ!?」
「まさかケーキ嫌いだなんて誰が思う!?」
「ありえねー!!」
「ねぇ、皆アタシに対してどーいうイメージ持ってんの?」
でも確かにそうだって。
俺だってそう思った。
普段甘いもの好きで、大食いなこいつがケーキが無理?
嘘ついてんじゃね・・・?
「どこが無理なんだよ?」
「んー、何って言うんだろう・・・。
よく分かんないけど、何か無理ー。
途中から気持ち悪くなるんだよねー。
あっ、チーズケーキは大丈夫なんだけども!!」
「パフェは?」
「へ?好き」
「シュークリームは?」
「好き」
「チョコレート」
「好き」
「アイス」
「好き」
「意味が分かんねぇ」
「なっ、なにをー!?」
こんだけ甘いもの好きなのにか?
はぁ、女ってわっかんねぇ・・・。
いや、それはこいつだけか?
「まぁそー言うわけだからケーキはいいよ
アタシはケンタ食べに来ただけだからさ!」
「もぉ本当お前帰れ」
そんな馬鹿みたいな会話をしてるうちに食い物はほとんどなくなった。
そうして窓の外を何気なく見ると
そこに見えたのは三橋の練習場・・・か?
三橋を呼んで確認すると、どうやら間違いなかったらしい。
適当にみんなが食べ終わったころ
俺たちは下に降りて“的”を見に行った。
「で?」
「はい?」
「お前も来んの?」
「アタシがきちゃ駄目なの?」
「いや、駄目じゃない・・・駄目じゃないけどなぁ!」
「?」
「チキン4本持ちながら見学ってどーなんだ?」
食い意地はりすぎだろ!
つか俺さっきからはチキン食ってるとこしか
みてねぇんだけど、ひょっとしてこいつケンタしか食ってねぇ?
「いいじゃん、気にしない!!
仕方ないよ、ケンタはおいしいんだから!」
「プレートあんの?的当てやらしてー」
「あー、田島、ちょっと待て!」
「え?無視ですか?そーですか。
くっそぉ、泣きてぇよ・・・!」
隅のほうで泣いてるを無視しながら
三橋に投げる場所を指定していく。
三橋の球は言った通りの場所に当たって
他のやつらはそれにかなり驚いてる。
当然だ。
こいつはそれだけいい投手なんだからな。
的を触ったり見たりしながら少し前の俺を思い出す。
三橋に会った時はただ、俺は“俺の野球をするために”動いてた。
考えれば馬鹿みたいだ。
野球は俺一人でやるモンでもねぇのに・・・。
今は、三橋を勝たしてやりたいって思う。
こんだけ努力してるヤツ・・・その努力を無駄にしたくねぇ・・・。
「アタシさ、今阿部の考えてること
何となくだけどわかるよ」
「うわっ!?お前いきなり出てくんなよ・・・」
「アハハ、すまんな!
阿部はさ、何っていうか丸くなったんじゃない?
あっ、体型じゃなくて性格ね!」
「そーか?」
「うん。本当に最初の方は知らないけどさ・・・。
ほら、アタシ転校してきたから」
「あぁ、そーだったな。
お前ありえねぇスピードで馴染んだから忘れてたよ」
そーいやこいつ転校してきたんだっけな。
本気で忘れてた。
初日からかなり馴染んでたからな。
まぁ、そこがこいつの長所なんだろーけど。
「いいんじゃない?自分の野球で考えてるよりも。
そんな風に皆の野球を考えてるほうが!
頑張れよ捕手!!」
「いってっ!!!
お前・・・背中叩くなよ馬鹿力・・・!」
「こんなか弱い乙女に馬鹿力いうな!!!」
「お前のどこがか弱いかを是非とも教えて欲しいもんだな。
3文字以内で」
「か・ら・だ。キャッ!」
「キモイ」
はぁ、ちょっと感動した俺が馬鹿だった。
所詮こいつはただの馬鹿だ。
いや、馬鹿以上の馬鹿だろ!!
「なぁ、阿部さんよぉー」
「あ゛?」
「アタシ思うんだけどさぁ・・・
アンタ前よりも今の方がいいよ!ずーっと!」
「・・・・・・・・」
「?」
「的当てはおわり!さー、勉強勉強!!」
「えぇ!?また無視なの!?
あぁーへこむ・・・。
でもお腹がへこめばいいと思う」
「、上がるよー?」
「おうよ、栄口ー・・・」
んなこと言うなよ。
すっげぇ恥ずかしいから!!
あいつそーいう感覚ねぇのか!?
クソッ!なんかムカつく!!
俺は三橋を引っ張って上に上がった。
おそらくその時赤かっただろう顔は
誰にも見られることはなかった。
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