悪いなぁって思ってるんだけど
行動には移せないんだ
彼女と彼と青空と
10*不審
「辛いくせに・・・無理して笑うな」
「泣けって!」
「泣きたいくせに威勢なんかはってどーすんだよ。
そんなことしたらお前もあの猫も苦しいだけだろ。
胸ぐらい貸してやるよ。ただし今日だけだぞ」
「・・・・・・・・今日だけお借りします」
「わーーーーーーーー!?」
ゴンッ!!
ゴツンッ!!
「「っーーーーーーー!?」」
痛ぁー!
何!?何が起こったの!?
一瞬目の前が明るくなったと思ったらまたすぐに暗くなった。
え!?てかさっき一瞬見えたの教室だよね!?
ってことは今授業中・・・?
そしてアタシは夢を見ていましたかー?
あんな恥ずかしい夢を!?いやー!思い出しただけで死にたくなるほど恥ずかしい!!
つかなんか頭部とおでこが痛い・・・・・・。
ふむ・・・アタシの完璧な頭脳が考えるに
おそらく勢いよく上げた頭が何かに当たり
その反動でアタシの頭がまた机にぶつかったということだろう・・・。
フッ・・・・・・完璧だアタシ・・・。
そして今!!
その完璧な頭脳が言っている!!!!
「〜〜〜〜」
この状況は非常にヤバイと!!
クラスの皆が笑っているのが分かるよ!
だって皆隠すこともなく笑うんだもん!
なんて無情なやつらなんだ・・・助けてくれたっていいものを・・・!
多分・・・いや絶対一回目に当たったのは担任のあごだと思う・・・。
嫌だ・・・・。
顔を上げたら殺られる!!!!!!(←必死
「放課後職員室に来い」
「えっ!?そんなっ!!」
バシンッ!!
ゴツンッ!!
「−−−−−−っ!?ったぁーーーーーー!?」
事が起こったとたんにクラスから起こる爆笑の渦。
うおぉぉぉっ・・・・・恥ずかしすぎる・・・・・・。
え・・・ちょっ!!今見ました!?
この先生アタシが頭上げたところに教科書構えてましたよ!?
おかげでまた机とボンジュールだよ!!
痛い!最悪だこの教師!!
訴えてやりたいけど・・・。
確実にこっちが負ける気がするのは気のせいなのかなぁ・・・・。
先生はそれで満足したのかそのまま黒板のほうへ。
「こないと単位大幅に減らすからな」
という一言を残して・・・。
職権乱用だ!!
畜生!!
普通に授業再開する辺りが憎いぜ担任!!
放課後になると逃げるように教室を後にして
マイハニー千代ちゃんに部活に出るのが遅くなることを伝えた。
そうしてまた逃げるように・・・。
―――――階段を3段飛ばし位で駆け下りて―――――
職員室に向かった。
昨日の事があってからアタシは阿部といつも以上に話しづらい。
それは色々な恥ずかしさからくる気まずさでアタシにはどうしようもないことだ。
普通にするべきだなんて分かってるんだけど・・・。
体が勝手に阿部を避けるんだなコレが・・・。
このことに阿部が気づかないといいけどなぁ。
・・・・・・・・・・・・・・・・って何でだ!?
何で気づいてないといいの!?
いやいやいや!!意味分からない!!
これはきっとあれだ!!言葉のあやってもんで。
別に・・・そんな深い意味はないんだからね!!
なんて・・・誰も聞いてないのに言い訳してるとか自分相当焦ってる!?
落ち着け!まずは深呼吸!
すーすーすーすーすーって死ぬわ!!
バコッ!!
「Ouch!!!!」
「何がアウチだ。一人漫才してないで入るなら早く入れ。
というか今すぐに入れ!」
後ろからかかった声に頭を押さえて振り向くと
担任が不機嫌そうな顔で出席簿を持ってたっていた。
おのれまた貴様か!!!
「ちょっ!先生!!何回私の頭叩けば気がすむんですか!?
細胞全部死んだらどうしてくれるんですか!」
「安心しろ。埋めてやる」
「そーじゃなくて!!!」
「うるさい。ほら。
いいから早く入れ。ここで騒ぐと迷惑だ!」
そういって半分無理矢理職員室の中に入れられる。
ワォ☆もぉ職員室についてたのか!?
考え事してたから気がつかなかったよ!!
色々文句は言いたいけどワタクシは大人なので
それをグッと我慢して先を歩く担任の後ろをついていく。
担任の机の前で立ち止まると担任はさっそく話す体制に入ったみたいだった。
腹の立つことに自分だけイスに座りながら!!
「」
あぁー説教が始まる。
嫌だなぁ早く部活に行きたいなー。
早く終わってくれ!説教なんぞ!!
「お前何かあったのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
突然の予想もしない言葉にいつの間にか下げていた顔を上げると
そこには少し心配そうな顔をした担任が。
・・・・・・・あれ???
説教じゃないの・・・・・・・?
「え?あっ・・・あの・・・・・・・何でっすか?」
状況がまだの見込めないよ!
アタシは説教されるために呼ばれたはずなのに第一声が
「お前何かあったのか?」だ。
これは誰だって驚くし焦るぞ!?
「いや・・・今日は阿部とお前の攻防戦がなかったからな」
「攻防戦言わないでくださいよ!
というか・・・まぁたまにはこんな日もありますよ」
言えない・・・・・恥ずかしすぎる!!
それと同時に何だか情けない気がしてきた・・・。
あんなことがあったぐらいで気まずいなんて・・・・馬鹿みたいだ。
でも仕方ないじゃんか。
恥ずかしいものは恥ずかしいし
気まずいものは気まずいんだから・・・!
「ふーん・・・まっ。
お前がそういうんならいいけどな。
まぁ一応担任だから何かあったら話ぐらいは聞いてやるよ」
「先生・・・」
今先生がとってもいい人に見えるよ!!
ここに来て初めていい人に見えたよ!!!
ちょっと感動しちゃったじゃんかー!
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ!
では・・・お気遣いありがとうございました。
部活があるので私は失礼しま「待て」
くるりと方向転換した途端捕まれる手首。
うおっ!?意外と力強っ!!!
じゃなくって!!
いやーな予感がして恐る恐る後ろを振り向くと
そこにはまばゆい笑顔がありましたとさ・・・。
「説教は・・・・・・まだだろ?」
やっぱりかーーーーー!?
「すいません!!遅れましたぁ!!!」
結局部活に行ったのはあれから一時間後だった。
くそぉ!!
一瞬でもいい人と思ったアタシのあの感動を返せ!!
「ちゃん!お疲れ様!千代ちゃんから聞いたよ?
説教だったんでしょ?」
「うっ、監督ー・・・」
「あはは!ごめんごめん!
今千代ちゃんドリンク作ってるから行って手伝ってあげて!」
「了解っす!じゃぁいってきまー・・・」
「あれ?ちゃん?」
ズテッ!!
「ちゃん!?だっ・・・大丈夫!?」
「大丈夫・・・」
え?何が起こったかって?
こけたんだよ!!!!チクショー!
そりゃ走り出そうとしてたとこに本人きたらこけるよ!!
うわぁーー!今日は痛い思いしてばっかりだ!!
何だこれは!
何のサービスデーですかってんだ!!
こんなサービスいらない!!
「きゅーけー!!」
グランドに監督の声が響き渡って部員がぞろぞろ帰ってくる。
うーん・・・こんな光景どっかでみたぞ・・・?
・・・・・・・・・・・・あっ分かった。
バイオ●ザードだ
「じゃぁちゃん・・・半分お願いできる?」
「OKー。任せといてー」
部員にドリンクを配っていく。
今日も皆どろどろだなぁ・・・それに汗だく。
まぁ練習してんだから当たり前だけどね・・・。
そんなことを考えながら体はやっぱり避けてる。
アタシはさっきから阿部に会わないように必死だ。
といっても警戒してるだけなんだけど・・・。
だってマネージャーだもんね・・・話しかけられるのは仕方ないよ・・・・。
「おい」
今日初めて自分に向かってかけられる声。
その少し低い声が何だか少し懐かしい。
一日もたってないのに懐かしいって・・・アタシもそろそろ歳・・・・・なのか?
つかヤバイ・・・体が固まって振り向けない・・・!
「なっ・・・何ー?」
「俺にもドリンクくれって」
おおおおお落ち着けアタシ!!
何も怖いことはない!!
そして緊張することもないさ!!
相手はたかが阿部だ!!そうさ!相手はかぼちゃだと思うんだ!
不審がられないように・・・いつもと同じテンションで・・・・。
「へっ・・・・へい!お待ち!!!」
「お前は寿司屋か!!」
やっちまったぁぁぁぁぁっ!!
もぉ何をしたらいいかとかが全く分からない。
思考回路がおかしい。
アタシ頭から煙出てない!?大丈夫!?
とりあえず混乱しながらもドリンクを差し出せたことには拍手だ自分!
「いいいいいいでしょ!!別に!!
じゃぁアタシはこれで!!!」
「あっ!ちょ!おい!!」
逃げた。
全力で。
千代ちゃんの元に逃げた。
最悪だー・・・感じ悪すぎだよなぁ・・・。
アタシがこの日阿部と会話したのはこれだけで終わった。
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