おとこのこは きのうえにいました
このまちの いちばんたかいところにある いちばんたかいきです
そこは おとこのこの だいすきなばしょでした
おとなのひとたちは あぶないというけど
おとこのこは いつもこっそり そのきにのぼっていました
きょうもおとこのこは きのうえにいます
かぜがきもちよくて まちがとてもちいさくみえました
するとどこからか えーんと なきごえがきこえてきました
ふしぎにおもったおとこのこは したをみました
きのしたには おんなのこがひとり ないていました
「どうしてないてるの?」
おとこのこがそうきくと
おんなのこはおどろいて きょろきょろと まわりをみました
こえがどこからきこえたのか わからなかったのです
「ここだよ こーこ」
おんなのこがうえをむいて おおきなめをもっとおおきくしました
「ねぇ どうしてないてるの?」
おとこのこはもういちど おんなのこにききました
するとおんなのこは またないてしまいました
そして すこしずつはなしだしました
「おかあさんにもらった だいすきなマスコットが
どこかにいっちゃったの
どうしよう・・・ どうしよう・・・」
「じゃぁ ぼくがいっしょにさがしてあげる!」
おとこのこが えがおでそういいました
なぜだか おんなのこをほおっておけなかったのです
なにかちからになってあげたい そうおもいました
それをきくと おんなのこは おとこのことおなじように
えがおになって おれいをいいました
おとこのこはきから するするとおります
それをみておんなのこは たのしそうにわらいました
おんなのこがわらうと おとこのこもうれしくなって わらいます
「ぼくね たかせじゅんた!」
「じゅんたくん?」
「うん!」
「そっか よろしくね!じゅんたくん!」
げんきのいいこえに おとこのこはあんしんしました
さっきまでないていたから おとこのこはしんぱいだったのです
でも もうだいじょうぶそう
「ねぇ どうしてきのうえにいたの?
きのうえからは なにがみえるの?」
おんなのこが くびをかしげてききました
おおきなめで おとこのこをみます
おとこのこは きいてもらえたことがうれしくて うれしくてしかたがありません
いままで あぶないとか だめだ というおとなのひとはたくさんいたけど
こんなことをきいてくれるひとは ひとりもいなかったからです
「きのうえはすっごくきもちいいんだ!
かぜがびゅーってふくんだよ!
それでね したをみたら まちがこーんなにちいさくなってるんだ!」
おんなのこは またおどろいたかおをしました
そして おとこのこのはなしをきくのがたのしいみたいです
「えー!?そんなにちいさいの!?
すごいすごい!いいなー わたしものぼりたいなー」
「じゃぁ あしたおいでよ
のぼるのてつだってあげるから いっしょにのぼろう!!」
「きゃー!いいの!?
ありがとう じゅんたくん!!」
やくそくをわすれないように ふたりはゆびきりげんまんをしました
でも はりをせんぼんもむのはこわかったから
あめをじゅっこ たべることにしました
ゆーびきーりげんまん うーそついたら あーめじゅっこ たーべる ゆびきった
これでこわくありません
ふたりは ゆびをはなすと もういちどわらいました
それからふたりは ちかくのこうえんにいきました
このこうえんで おんなのこのマスコットは なくなってしまったのです
「どんなかたちなの?」
「うーんとね しろいねこ!
けがふわふわなの」
けがふわふわの しろいねこ
おとこのこは そのすがたをそうぞうしました
よくわからなかったけど おんなのこににあいそうだ とはおもいました
ふたりはべつべつになって ちがうところをさがしました
すべりだいのうえ すなばのなか ブランコのした うんていのちかく
でもどこをさがしても しろいねこはみつかりません
おとこのこは じかんもわすれて ひっしにさがしました
それをみて あきらめそうになったおんなのこも がんばってさがしました
ふたりのふくはどろどろで あたまにははっぱがついています
けど そんなことはきにしません
いまはそれよりも しろいふわふわのねこのほうがたいせつです
もうすぐサイレンがなります
それがなると もういえにかえらないといけません
おとこのこは とけいをみながらくさをかきわけました
おんなのこは むこうできのしたをみています
「あ」
ありました
くさのなかに ちいさなしろいふわふわのねこがいたのです
おとこのこはうれしくなって すごくなきたくなりました
がんばってさがして みつかったからです
でも なくなんてかっこわるい
そうおもったおとこのこは なくのをがまんしました
ちいさなしろいふわふわのねこを そっとてでつつみこみました
てからちょっとみみがでてるけど そこはがまんがまん
おとこのこは ちいさなしろいふわふわのねこを おとさないようにしながら
おんなのこのところに はしっていきました
「みつけた!あった!!あったよ!!
マスコットみつけたよ!!マスコットみつけたよ!!」
そういうと おんなのこは とてもうれしそうにこっちをみました
さしだしたてに しろいねこのマスコットをおとします
おんなのこは またうれしそうにわらって それからなきました
みつかったのがうれしかったのです
おとこのこは さっきなかなくてよかったとおもいました
「これだよ・・・これだよ・・・ありがとぉじゅんたくん
みつけてくれて ありがとぉ」
「どーいたしまして!!」
おとこのこは おんなのこがなきやむまで そのあたまをなでてあげました
おんなのこは しばらくないていました
おんなのこがなきやむと サイレンがなりました
もういえにかえらないといけません
ふたりは こうえんのいりぐちまであるいていきました
そして いりぐちでもういちど ゆびきりげんまんをしました
ゆーびきーりげんまん うーそついたら あーめじゅっこ たーべる ゆびきった
「じゃぁまたあしたね!!」
「うん!!またあしたー!!」
ふたりはいえにかえりました
つぎのひ おとこのこはきのうえにいました
はやくこないかな
たのしみで どきどきしました
あったらなんていおうかな
そんなことばかり かんがえています
おとこのこは おんなのこがくるのを ずーっとまっていました
ときどきつよいかぜがふいても おとこのこはそこにいました
おんなのこにあえるなら かぜぐらいへいきでした
でも いくらまっても サイレンがなっても おんなのこはきませんでした
それから まいにちまいにち おとこのこはきにのぼりました
そして まいにちまいにち おんなのこをまちました
ときどき こうえんにもいきました
ひとがたくさんいるのに おんなのこはいません
おとこのこはがっかりして またきにのぼりました
でも いくらまっても サイレンがなっても おんなのこはきませんでした
「ぼく・・・なまえもきいてなかったのになー
こんどあったら ちゃんときこうとおもってたのになー
どうしてこないんだろ やくそくしたのに」
おとこのこはそういうと すこしだけ ほんのすこしだけなきました
かぜが またつよくふきました
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